アドテック東京2018レポート:『店頭商品とデジタル広告・動画との関係を可視化する』

10月4日(木)・5日(金)に開催されたアジア最大級のマーケティングカンファレンス「アドテック東京2018(ad:tech tokyo 2018)」。『店頭商品とデジタル広告・動画との関係を可視化する』ではCyberBull代表の中田がモデレーターを務めました。当日の模様についてレポートをお届けいたします。

※有料の公式セッションにつき、セッションの一部のみピックアップしてご紹介致します。


小売・メーカー企業が発展するためにマーケティングは何ができるか?

冒頭に本セッションの背景として、モデレーターを務めるCyberBull中田より、日本社会の「消費」のあり方の変化について解説がありました。

中田大樹: 株式会社CyberBull代表取締役社長

中田大樹:株式会社CyberBull代表取締役社長

「Amazonをはじめとしたオンラインストアの発達により、”実店舗で買い物をする”というこれまで当たり前だった消費行動は崩壊しつつあり、さらに買い手となる消費者は少子高齢化によって今後さらに減る一方と予想されています。

これらは「モノを売る」ことをビジネスとする小売業やメーカーにとっては見過ごせない変化で先細る一方なのではないでしょうか。

このセッションでは『店頭商品とデジタル広告』をテーマに、これからの時代に企業がさらに発展していくために、小売、メーカー、広告代理店、という3つの立場のスピーカーの方々と業界がどうなっていくべきか、忖度なしで話していきます。」(CyberBull 中田)

ーデジタルだけでは店頭がつくれないのが現状

デジタル広告施策と店頭を紐づけるというテーマにおいて、デジタル広告はどれだけ商品の売上に寄与できるかが重要である。ということからまずは、「投資対効果」として、どのようにデジタル施策のKPIを設計しているのか、キリン株式会社の上田氏を中心に現状を伺いました。

上田 芳治氏:キリン株式会社 デジタルマーケティング部

上田 芳治氏:キリン株式会社 デジタルマーケティング部

「そもそも広告全般に言えることですが、広告効果としての売上の可視化は非常に難しいです。なのでブランドによっては、KPIを認知においたり、飲用意向において判断しています。

いかに広告を作っても景気や天気といったその他の要因でマーケット自体がシュリンクしてる可能性もありますし、そもそも買う店舗が異なると設定される値段も違うので、前提がかなり異なる。どこまで広告の効果があったか非常に解明しづらいというのが現状です。

とはいえ、そこで留まってはいけないのでどうしたらいいかなと思っています。」(キリン 上田氏)

上田氏の感じる課題に対して、堀氏も同様の課題を指摘しました。

堀 宏行氏:株式会社セブン&アイHLDGS. デジタル戦略部

堀 宏行氏:株式会社セブン&アイHLDGS. デジタル戦略部

「小売の立場でも同じですね。仕入れ担当者は、テレビCMに2000GRPでこのタレントが出ますと言われると、なんとなくこれくらい売れるんだろうなというイメージがしやすいですが、デジタルについては投下量やこんな広告を出しますと言われても、ふーん、というか。イメージがしにくいです。」(セブン&アイ 堀氏)

ーでは、仕入れ担当者はどうやって商品を仕入れているのか?

「事実としてデジタル広告への出稿費は年々上がってきています。そもそも、デジタル施策が店頭への配架と連動していないとことも課題としてあるのではないでしょうか」(CyberBull 中田)

そこで、堀氏に、店頭での配架がどのように決められているのか解説して頂きました。

堀氏によると、新商品の仕入れ担当者は、主に以下のようなことを考えているとのこと。

<新商品の仕入れ担当者の考えること>

  • 売れるものを仕入れたい
  • どこよりも良い条件で仕入れたい
  • 自分のチェーンだけで売りたい

対して、メーカーの営業担当者は自社の新商品を売ってもらうため、小売の仕入れ担当者との商談で商品価値の他に様々なアピール点を伝えます。その要素のひとつが広告とのことですが、ここには現状、デジタル広告施策はほとんど加味されていないそう。

「テレビCMであればある程度は売上の予測がわかるんですよ。ただ、ネット広告については仕入れ担当者もまだ価値がわからないんです。

先日、仕入れ担当者に話を聞いてみましたが、デジタル広告でどんな施策をするかは、店舗を回る営業担当者にもお店にも一切伝えていないそうなんです。残念ながら。」(セブン&アイ 堀氏)

宮地 成太郎氏:株式会社電通

宮地 成太郎氏:株式会社電通

「ですが、デジタル広告をやってきた身からすると、商品は売れるんですよね。大きな予算の案件でもここ2〜3年で手ごたえを感じてきています。それでもそこに価値がないといわれるのは少し悲しいですね。」(電通 宮地氏)

宮地氏も、ここ数年でデジタル広告の予算規模は拡大しており、実際に商品が売れるケースも見られるようになってきたと語りました。上田氏も、デジタル広告の要素が、小売・メーカー企業の商談から抜け落ちているのはもったいない、と続きます。

「商談の場では、広告はあくまでも必要条件。出稿量だけで棚が取れるというのは短絡的な考え方です。

しかし、我々の扱う大衆消費財ではリーチ確保のためにもテレビCMに加えて、デジタル広告もやっていきます。デジタルも消費者を動かせるんだということがわかったほうが、小売さんにとっても得なはずです。

デジタルがまったく配架の検討材料にならないのはもったいないし、デジタルの投資対効果は改めて明らかにしていきたいなと思います。」(キリン上田氏)

ーデジタル広告を店頭につなげるために必要なのは「投資対効果」の可視化

続いて、デジタル施策の投資対効果が明らかになれば本当に店舗へ繋がることができるのかという議論に移りました。

「仮にデジタル広告に投資対効果があると証明できれば、小売側の立場の方々もそれを配架に加味してくれるのでしょうか?」(CyberBull 中田)

「デジタル広告も配架へ加味するようになると思います。デジタルだからさらにできるんじゃないかなとも。テレビはネット決済していませんからね。」(セブン&アイ 堀氏)

デジタル広告の効果としては、どのような数値を見るべきかという議論においては、

小売の観点からすると、正直、判断軸は”売り”だけになります。」(セブン&アイ 堀氏)

「広告のもたらす効果としてはブランドエクイティという話もありますが、対流通さんという観点だと売上が一番の共通言語になってきますので、売上への効果を見ていくべき。」(キリン上田氏)

ーデジタルの投資対効果を可視化するセブンアンドアイのワンID構想

投資対効果を可視化するためにはどうすればいいか、という課題について「デジタルGRPといった新しい指標が必要なのではないか」といった意見もあがりました。しかし、投資対効果を明らかにすることにはやはり課題が大きいと上田氏は語ります。

「AさんとBさんで、買っているチェーンさんが違えば、並んでいる商品も違うわけだし、価格も違うわけだから、それによって買わなかった可能性も多いわけじゃないですか。

それをデジタル広告の接触・非接触で比較して広告を見たから売れましたといわれても、あまり因果関係の説明にはならないんですよ。

前提条件が異なりすぎています。」(キリン上田氏)

そこで、堀氏より今年6月から同社の取り組む「ワンID構想」という新たな取組みの紹介がありました。

ワンID構想とは、もともとはOne to Oneマーケティングを強固にする目的で始まった取組みで、セブン&アイグループに属するリアル店舗やオンラインサービスのもつ顧客情報を7iDとして一元管理する仕組みのことだそう。これまでバラバラに管理されていたものがひとりひとりの消費者に紐づいたデータとして取得できるようになります。

「広告出稿データと紐づければ、広告検証ツールとして実際に色々使えるんじゃないかと考えています。」(セブン&アイ 堀氏)

「まずデジタル広告を色々と配信させてもらいます。そして、広告を見て頂いたお客さんに、実際にグループ内のネットもしくはリアル店舗で商品を買って頂くと、それをしっかりその後分析できます。という話です。

分析のところでは、広告に前もって接触した方と接触していない方とを比較することによって、広告効果を詳らかにすることもできると思います。もちろん、誰がどんな広告を見て、どこのお店で、どの業態で買ったのかも詳らかになってくる。」(セブン&アイ 堀氏)

個人のデータをどのように紐付け管理しているかは非公開とのことでしたが、これによってデジタルの投資対効果を可視化するための環境は整ってくると期待されます。一方で、サンプル数への疑問も生まれました。

「有効サンプル数となるデータの母数が課題になってくると思いますが、どれくらいなのでしょうか?」(CyberBull 中田)

「公表数値なのですがアプリをダウンロードしてくれているお客さまは650万くらいです。でも店頭でアプリを出してくれないんですよね。今の利用率で言うとまだ100万人にも満たないくらいです。」(セブン&アイ 堀氏)

100万人というとサンプル数としては十分満足のいく数値ではないか、といった声も上がりましたが、その多くがロイヤルカスタマーでデータに偏りが見られるであろうことや、店舗におけるアプリの利用率が低いことから、サンプルデータにするためのにはまだ懸念も多いと堀氏は語りました。

この構想に対して上田氏も「この規模のサンプル数があれば、ひとつの実証結果として証明できるのではないか。売上にどう効いたかという点では、こういった特定の流通さんと一緒に実証させてもらえるのが一番見やすいんじゃないかと思います。」(キリン上田氏)とコメント。

堀氏によると、最初はセブンアンドアイの自社広告で実証を進めていく予定だが、今後の展開としてはメーカーの広告でも活用可能だとのことで、「実証データは使っていただいて構わない。」(セブン&アイ 堀氏)と、他社の広告施策でも7iDを使った実証結果として公表することも構わないと補足しました。

「冒頭で、投資対効果を明らかにするのは難しいと言いましたが、これならセブン&アイという同じ場所で買っているという前提条件がそろうので、広告の接触非接触の因果が図りやすくなるのではと思う。前向きに検討してみたいと思います。」(キリン上田氏)

ー広告の効果が暴かれていく時代にクリエイターはどうなるのか?

広告効果が可視化されるとなると、必然的にクリエイターは売れる広告をつくることが求められるようになります。セッションのまとめに、宮地氏も未来のクリエイターの姿勢として以下のように語りました。

「自分の作った表現がどれくらい売上につながってくのかをみるのは重要なことだと思っています。

僕たちがセブンさんから情報を買わせてもらうこともあるのではないでしょうか。クリエイターとして学びになりますし、表現力を高めていくためにその情報を使えるというのは、かなり未来のある話だと思います。

店頭でモノが売れたという情報は究極の情報です。そこへ向けては、クリエイターとして貪欲に売れる表現づくりに取り組んでいければと思います。」(電通宮地氏)

ー本セッションのまとめ

「デジタル施策はまだ何となくやってる方も多いと思うのですが、投資対効果の可視化を進めていかないと業界は進んでいかないと思っています。

ここにいる会場の皆さんも含めて取り組んでいければ、もう少しマーケティング業界もより本質的な方向に進んでいくのではないかと思います。

ご清聴ありがとうございました。」(CyberBull 中田)


 

当日は立ち見の方もいらっしゃる程の盛況で、満員御礼で無事セッションを終えることができました。当日は、記事で紹介した内容以外にも、普段はなかなか聞く機会のないリテール・メーカーそれぞれの立場での本音も伺うことができました。

当社CyberBullは、売上へ寄与できる広告・マーケティングの実現を目指しています。

本セッションで明らかになった「実店舗への配架とデジタル広告の施策が結びついていない」という課題を解決するために、まずはデジタル広告の投資対効果を明らかにしていきます。

共に力を貸してくれる企業の方がいましたらぜひ、お気軽にご連絡ください!

また、今回のセッションのようなリテールとメーカーの直接のお話し合いはとても重要だと思っており、今後もイベントやセミナーを通じて、マーケティング業界の発展に向けてディスカッションしていく予定です。

→CyberBullへのコンタクトはこちらから

最後に、登壇されたスピーカーの皆さまへ、改めて厚く感謝申し上げます。

 

 


ー登壇者プロフィール(敬称略)

堀 宏行
株式会社セブン&アイHLDGS.
デジタル戦略部 デジタルマーケティング シニアオフィサー

1990年セブン-イレブン・ジャパン入社。店舗勤務・FC店舗経営指導員経験後、2002年販売促進部に配属。店頭POPからテレビCM等のマスメディアまで広く従事。2017年よりセブン&アイHLDGS.オムニチャネル管理部でEC事業の販促・サイト運営を推進。2018年より現職。リアル店舗とネット事業のデータドリブンマーケティングの推進を担う。

宮地 成太郎
株式会社電通
クリエーティブ・テクノロジスト

1985年生まれ、2012年電通入社。日清食品「キャベバンバン」(2018)、テレビ朝日「Mステ階段ジェネレーター」、日本マクドナルド「和風ポテトフライ 大学いもの味」(2017)、サントリースピリッツ「ふんわり妄想漫画シアター」(2016)、味の素ゼネラルフーヅ「又吉BOOKボトル」(2015)、日清食品「みつめてLight +」(2014)など、既存の広告にとらわれない幅広いアプローチを得意としている。 健康な食生活を維持するために、有機野菜とグラスフェッドビーフに給料を注ぎ込むエンゲル投資家としても活躍中。

 

上田 芳治
キリン株式会社
デジタルマーケティング部

2006年キリンビール株式会社に入社。入社から約6年間は、主にスーパーマーケットや酒ディスカウントストアなど家庭用市場を担当。その後、マーケティング部に異動しTVを中心としたマスメディアのプランニングや商品開発に従事。2017年4月、キリングループの横断的デジタルマーケティングセクションである現部署に異動し現在に至る。デジタルに閉じない、ブランド課題に応じたコミュニケーション設計を模索中。

中田 大樹
株式会社CyberBull
代表取締役社長


2011年サイバーエージェント入社。インターネット広告事業本部にてアカウントプランナーとして主に関西のWeb広告市場を開拓する。2015年4月に株式会社CyberBullの設立に伴い、代表取締役社長に就任。動画広告に特化した広告代理事業を展開している。2016年10月より株式会社サイバーエージェント執行役員就任。

 

文:小野静香